「祭りと言えば楽しいものだと思っていたが、結構大変なものだな。」
そう言いながら、アスランはされるがままに跳人の衣装を身に着ける。
まさか他国の祭りに駆り出されるとは思わなかった。それというのもキラとラクスが
「ねぇねぇアスラン。僕らのMSが友好関係の象徴として、お祭りのシンボルにされるんだって!だから一緒に来てくれるよね?」
「とても良いものができたそうですわv」
と、ノリノリで相談というよりも決定事項として告げてきた。
キラ曰く
「カガリも丁度その時、その国の首脳と会談があるんだって。だから歓迎の意味も込めてらしいよ。」
だそうだ。
ラクスも「作り上げるのは相当大変な技術と期間が必要らしいです。」と言いながら見せてくれた写真には、製作途中らしいがそれでも大きなマイティ―ストライクフリーダムと、俺のインフィニットジャスティス弐式の像が写っていた。
「なかなか凄いものだな。」
思わず感心する。これを骨組みと紙とで作り上げるとは。
一瞬、他国に国家機密であるMSを公開して良いものかとツッコミを入れたくはなったが、ある意味地球圏を救った英雄機と称されるなら、あの激戦を戦い抜いてくれた機体をこうした形で労をねぎらってやるのもいいのかもしれない。
(最も―――)
そうだとすると、俺の場合、この数年を共に戦ってくれたあの機体も労ってやりたいところだが。
シンの様に機体への思い入れはさしてない俺だが、こうして考えることができるようになったのはずっと愛機を乗り続けている彼女の影響かもしれない。
そんな俺の様子をみて、肯定的と捉えたのか、キラが口を開いた。
「ということで、当日アスランも一緒に来て、これを引いて街中練り歩くらしいから、自分の機体なんだし、ちゃんと引くよね?」
だからその言い方はもはや俺に選択権などないだろう。しかし、こちらにも仕事がある。
「だが当日俺はカガリの護衛を任されているから、カガリの傍を離れるわけにはいかないぞ。」
そんな俺の返事は最初から織り込み済みだったのか、キラとラクスは顔を見合わせて、微笑んだ後に俺を見つめる。
「それなら大丈夫!だってカガリだって「跳人やる!」って、滅茶苦茶お祭り参加に気合入れてるもん。」
「は!?俺はそんな話一言も―――」
「カガリさんがこの跳人のご衣裳身につけられましたら、とてもお似合いだと思いますわ~~💗」
ラクスの蕩けそうな微笑み。・・・確かに、こういうお祭り騒ぎはカガリは好きだろう。しかもこの衣装、カガリが身につけたら、あの細くてしなやかな脚をチラリとのぞかせながら、袂を端折るために帯で締めた分、あの胸が強調されそうな・・・
俺は慌てて首を横に振った。
「いや、良くないだろう。こんな衣装身につけたら、破廉恥な輩がどこから狙ってくるか―――」
「あー、自分がそうだからって、他の人も同じだと思い込まないようにね。てか、友好国の国主自ら参加するって、向こうからしても凄く嬉しいことじゃない。今後の国交でカガリにとってもものすごく有益だと思うよ。それにさ―――」
キラが俺の耳元に唇を寄せて囁く。
「君が隣にいれば、全く問題ないでしょ?勿論、変な虫からの怪しい視線も一網打尽にできるじゃない♪」
俺の最大の弱点「カガリの笑顔」と、「カガリに熱い視線を向ける他の男たちの排除」。いいところを突いてくる。流石は幼馴染だ。
「わかった。忙しい身のカガリにとって、少しでもストレス解消になるなら、協力せざるを得ないしな。」
「それじゃ、決まりだね。」
キラとラクスがまたもニンマリと頬を緩ませた。
***
こうして現地での会談や国交政策等、カガリらしい手腕で見事に成果を実らせた後、
「うわ~~!迫力あるな!」
そういって眩しいほどの金眼を更に輝かせて、カガリがフリーダムとジャスティスを見上げた。
「これが『ねぶた』というそうだ。これを引いて街を練り歩くらしい。」
「他にも一杯あるけど、これは壮観だな。オーブもこういう祭りがあってもいいかもしれん。それに、だ。」
カガリが俺の頭のてっぺんからつま先まで、じっくりと眺める。
「お前、凄く似合うぞ。腕とか出ると、やっぱり男らしくていいな。」
「カガリ・・・///」
そう言われる俺は、正直カガリを直視できないでいた。
ドレスと違い、想像以上に身体のくびれが強調される衣装だ。細いカガリの腰。そしてその逆に大きく膨らんだ胸。そして淡い祭りの光にサラサラの金髪が輝いて。
「何だよ。私には何か一言ないのか?」
腰に手を当てて、ちょっと下から見上げる様に顔を近づけられて、慌てて顔を逸らしてしまう。
「もしや・・・お前、また破廉恥な妄想を―――」
「してない!!ただ、いつものドレス姿と違って、その…言葉では形容しがたい美しさというか・・・」
「は?祭囃子が大きいから、もうちょっと大きな声で―――」
そう言って片耳に手を当て更に俺に近づくカガリ。
本当にこういう時の自分のボキャブラリーの無さを思い知る。
ただ一言、口にできればいいのに、寧ろ体の方が動いてしまいそうになる。
(綺麗だ―――)
だからこそ、この腕の中に閉じ込めて、誰の目にも触れさせたくない。
本能でそう感じとり、手を伸ばしかけた瞬間。
「あ、いたいた!カガリ、昼はお疲れ様。」
「お仕事、大変でしたでしょう。」
「おー!キラ、ラクス。二人とも着物が似合うな。ラクスはその帽子?なのか、凄く可愛いぞ。」
「ありがとうございます、カガリさん♪」
「さ、僕らのねぶたの番だよ。アスランはこの提灯持ってね。」
「え、あ、わかった。」
二人の勢いに飲まれて、訳も分からず提灯を手にする。
「行くぞー!」
カガリが腕を天に伸ばして、腰の鈴を<リリン♪>と鳴らしながら満開の笑顔を振りまく。
久しぶりだ。こんなに楽しそうにしているカガリを見るのは。
彼女の隣、一番の特等席でそれを見れるなんて。
キラとラクスはもしかしたら最初から、これを狙っていたのかもしれない。
だったら感謝しないとな。
***
「あー!終わった終わった。跳人って結構な運動量だな。」
そう言ってカガリは「う~ん」と背を伸ばす。
そんな彼女に俺はそっと小瓶を差し出す。
「アスラン、何だこれは?」
「『ラムネ』という飲み物らしい。この口についているガラス球を落とすと―――」
<プシュッ!>
「わっ、わっ、泡が溢れてきたぞ!?」
「そのまま飲んでくれ。」
カガリが慌てて溢れそうになるラムネに口を付ける。と
「美味~~~~い!キンキンに冷えていて、甘くてシュワシュワしていて。丁度喉乾いていたんだ。」
「それは良かった。カガリ、相当汗かいただろう。髪がはねてる。」

「そういうアスランもだぞ。・・・でも珍しいな。お前、お好み焼きの時もそうだったけど、こういう目新しい食べ物とか飲み物、自分から手を出す方じゃなかっただろ?」
確かに言われてみればそうだ。だが、先程幾つものカップルが、こうして恋人と手を取り合い、同じものを口にしているのを見たら、不思議と自分も同じことをしてみたい、と思ってしまった。無論、そんな下心はおくびにも出さない。
「まぁ、お好み焼きもそうだが、不味くはないのなら、試してみるのもいいかと思って。」
「だからそういう時は「美味い」って言えよ!でもまぁ、お前が食に興味が出てきたのなら、いい傾向だ。いろんなところで色んなものを食べに行けるしな。これからだって。」
「これから?一緒に?」
カガリが、俺との未来を、考えてくれている・・・?
すると
「そうだ、アスラン。お前に見せたいものがあったんだ。一緒に行こう!」
「ちょ、ちょっと待て、カガリ!」
俺の手を握ってグイグイと引っ張っていくカガリ。
もうねぶたも巡行も終わったし、あとはホテルに戻るだけのはずだが・・・
「あ、あそこだ!」
そこには巡行の終わったねぶたが並んでいる。幾つもの大きなねぶたが並ぶその中に
「カガリ、あれは・・・」
俺は思わず目を見開く。
「へへ~ん♪ 驚いたか?実は「オーブ代表から」ってことで、これを作ってもらっていたんだ。」
そこには

「『ズゴック』のねぶた!?」
「そうだ。お前はインジャ弐式があったけど、先の戦いではこのMSが一番活躍してくれたからな。見よう見まねでモルゲンレーテで作ってもらったんだ。いきなり持ち込み巡行ができないって言われちゃったんだけど、飾るだけならOK貰ったから。」
そういってカガリは俺を見つめ、にっこりと笑う。
「何より、お前と私が一緒になって戦ったMSだしな。」
もしかして、カガリがこの祭りに参加したかったのは・・・
「ありがとう、カガリ。俺たちの思い出を形にしてくれて。」
そう言って思わず彼女を引き寄せ、ふと唇を重ねる。
これだけの人出はあっても、ねぶたの影になって誰も俺たちに気づかない。
ゆっくり味わった彼女の唇は、ラムネの味がした。
・・・Fin.
***
ねぶた祭、行きたかった・・・(´Д`)ハァ…
グッズは祭り後に通販とかやってくれないだろうか。
とりま、妄想だけUPしておきます。